形成外科医/再生医療研究室室長・落合 博子が、『美容常識の9割はウソ』と題して、
真のスキンケア
を解説する1冊。
書籍の紹介文
あなたは、化粧品で美肌なれると思いますか?
化粧品では美肌にはならない!
「美肌効果を得るには、午後10時から午前2時までのゴールデンタイムに睡眠をとるのが効果的!」←科学的根拠なし。
毎日手の込んだケアをせずとも、美しい肌を手に入れることは充分可能!
肌に関していえば、何かを「やる」よりも、「やらない」ほうが、じつはずっと効果的!
と筆者は説きます。
本書は、再生医療のプロである筆者が医学的に正しい美容について解説する一冊。
日々のスキンケアの実践方法、最強のアンチエイジングができます。
やるべきこと、やってはいけないことが分かります。
【要約】20個の抜粋ポイント
❶角質層はいちばん外側にあるので、見た目の美しさを左右します。それゆえ、この角質層を一生懸命ケアしようとするわけですが、角質層はそもそも、しばらくすれば垢となって剥がれる運命なのです。
多くの人が、このたった0・01〜0・03ミリの死んだ細胞の表面をうるおわせるために、化粧水をせっせと使っている、ということになるわけですが、果たして意味があるでしょうか。
❷「無添加」という表現自体には、ほとんど意味がありません。「○○という成分が配合されていない」という意味でしかないからです。
❸化粧品は浸透させる必要はありません。むしろ浸透させてはいけないのです。肌に乾燥を感じるなら、もともとの皮脂成分に近いオイルやワセリンで、肌の表面に1枚ベールをつくってあげて、皮膚が正常に機能するように保護してあげるのがおすすめです。
❹紫外線は波長の長さによって「UV−A」「UV−B」「UV−C」の3種類に分けられます。このうち地上まで届いて肌に影響を与えるのは「UV−A」と「UV−B」の2つ。日焼けを引き起こす力を比べると、UV−BのほうがUV−Aより600から1000倍強いといわれます。ただ、日光にはUV−Aも大量に含まれているため、たとえば海水浴などで肌が赤くなるほど日焼けした場合、紫外線の割合はUV−Bが7〜8割、UV−Aが2〜3割と換算されます。
UV−Bは肌の浅いところで炎症を起こしやすいので、水膨れになったり、強い炎症反応が出て色素沈着が残りやすいのが特徴です。これに対して、UV−Aには炎症を起こしたり肌を黒くする力はさほどありません。しかし、UV−Bより波長が長く、肌の奥(=真皮深層)まで到達してしまうため、長期的に浴びると光老化の原因になります。UV−Aは雲や窓ガラスなどを通り抜ける性質もありますから、曇りの日でも気をつける必要があるのも特徴です。
現在は、紫外線を防御する主要成分として、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤が使われています。吸収剤は、おもにUV−Bに効果を発揮します。強い遮断力を必要とする場合は、吸収剤入りの方が効果的ですが、紫外線を吸収して化学反応を起こすので、肌が弱いとかぶれる可能性もある、一方、散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛がおもな原料で、UV−B、UV−Aの双方に効果があります。
散乱材のみを使った製品には、「ノンケミカル」「紫外線吸収剤フリー」などの表示がありますから、日焼け止めを使って痒みや赤みが生じたら、こうした表示のある製品に切り替えるとよいでしょう。
SPFは、”SunProtectionFactor”の略で、UV−Bに対する防御効果を示します。そしてSPFの数値が高ければ高いほどよいと思われていますが、じつはそうでもありません。つまり、SPF15以上になると、紫外線の防御率はほとんど変わらないということ。逆に、製品に「SPF50」と表示するためには紫外線吸収剤や散乱剤を大量に使う必要があるため、SPFの数値が高いほど、肌への負担は増えることになります。
SPFと並んで表示されるのが、「PA」。こちらは”ProtectiongradeofUVA”の略で、紫外線UV-Aに対する防止効果がどのくらいあるかを意味します。「+」〜「++++」の4段階で、「+」が多いほど効果が高いとされていますが、日本独自の分類評価だというのもその特徴。海外製品には、この「+」表記はありません。紫外線防止の効果をしっかり得るためには、「どの製品を選ぶか」よりも、じつは「こまめに塗る」ことが大切です。
表記の量よりも多めに、たっぷりと均等に、こまめに重ねづけ、を意識してください。屋外で過ごすなら2〜3時間ごとが基本。肌にすり込むのではなく、のせるようにつけると、より効果的です。ちなみに、アメリカのFDAではSPF15の日焼け止めを、日に当たる15〜30分前につけること、2時間ごとに塗り足すこと、そして水に入る場合はさらにこまめに塗ることを推奨しています。
❺そのほか、肌に対するストレスになるものとしてあげられるのは次の要因です。
【外的ストレス要因】紫外線、空気の乾燥、摩擦などの刺激、栄養素欠乏、廃棄ガスなどの大気汚染、喫煙、激しい運動、大量の飲酒
【内的ストレス要因】疲労や食生活の乱れ、睡眠不足などの不規則な生活、人間関係などの精神的ストレス
ですから、こうしたストレスを減らすことが、肌老化の防止にもつながるのです。抗酸化力をとり戻したいなら、食べていただきたい食品があります。活性酸素を除去する能力を備えた食べものです。果物なら、パイナップル、バナナ、キウイフルーツ、りんご、メロン、マンゴー。野菜では大根、にんじん、にんにく、たまねぎ、ほうれん草、アスパラ、ニラがおすすめ。
森林浴の精神的なリラックス効果や肉体的な回復効果が実証されているのですが、こうした効果をもたらす要素のひとつに、木が出すフィトンチッドが挙げられます。このフィトンチッドは、木が自分を守るための香り成分で、葉や幹、樹液など、木を構成するあらゆる部分から出ているもの。抗菌、防虫、消臭など、さまざまな効果が明らかになっています。
またフィトンチッドによる細胞培養の実験をおこなったところ、細胞が活性化するという結果も得られていますので、森林浴で、心身にはもちろん肌にもよい効果が期待できそうです。
❻わたしたちのからだには、驚くほどの自己再生力が備わっています。その力を充分に発揮させるためには、まずからだもこころも健康でなければなりません。からだが健康でないのに、肌だけ美しくなるわけがありませんよね。美しい肌を叶えるためには、肌の奥で生まれた細胞を丈夫にはぐくむことが大切です。そのためには、たんぱく質やビタミン、ミネラル、脂質など、肌に必要な栄養素を食事からしっかりとる必要があります。
たっぷりの野菜、お肉や魚、豆類や穀類をまんべんなく、おいしくいただきましょう。栄養バランスのとれた食事は、美肌づくりの基本です。また適度な水分補給は、内側から肌をうるおわせてくれるでしょう。
また生活のリズムも、とても大切。自分が心地よいと感じるリズムを見つけて、できるだけ規則正しい生活を心がけてください。
❼形成外科医の立場からすると、そうしたマッサージは残念ながらまったくの逆効果。肌のたるみやくすみ、黒ずみをつくる原因になってしまうからです。マッサージで押したり揉んだり引っ張ったりすると、この大切な線維組織が壊れます。皮膚を支えている細い糸が、プチプチプチッと切れてしまうのをイメージしてみてください。マッサージすることで、わざわざたるみをつくっているともいえるのです。
❽皮膚を再生するターンオーバーは約6週間。そのターンオーバーを助けるもっとも簡単な方法が「触らない」ことなのです。
❾肌を傷つけないように気をつければ、保湿するためのスキンケア製品は、基本必要ないでしょう。つまり洗いすぎなければ、本来は洗顔後に何もしなくてよいのです。とはいえ、乾燥が気になるからやっぱり何か使いたいという場合は、オイルやワセリン、ヒルドイド、セラミドなどの保湿剤を使うのがおすすめです。塗るときは軽くのせる程度にとどめ、マッサージしたりすり込んだりなどの刺激は加えないように注意しましょう。
❿大人ニキビは、遺伝因子や体調不良が原因といわれます。毎日メイクをしなければならなかったり、心身のストレスなど、さまざまな要因が重なって、肌のターンオーバーが乱れがちになることも要因です。同じ箇所に何度もできてしまったりするのも、肌の代謝機能が乱れている証拠です。皮膚科に行けば、洗い方や洗顔回数を含め、あなたに合った処方をしてもらえます。ニキビはひとりで悩まずに、まずは皮膚科へ行ってみましょう。
⓫じつは蒸気を顔に直接あてることでの保湿効果はほとんどなく、あてた直後はしっとりした気がしますが、その後すぐに水分は蒸発してしまいます。さらに、肌が長時間温蒸気でふやけると、うるおいを保つのに大切な角質層の構造が乱れ、角質層より深部に蓄えられている水分を蒸発させてしまうため、結果的に肌自体が乾燥しやすくなる可能性があります。また蒸気をあてつづけると、雑菌によりニキビなどの肌荒れを引き起こす原因にもなり得ますから注意してください。
⓬静電気の刺激は、じつは肌の角質を傷つけます。静電気を防止するためにまず効果的なのが、身にまとう衣類の素材に気をつけること。化学繊維やウールは静電気が発生しやすいので、できるだけシルクやコットン、リネンなどの天然繊維を身につけましょう。部屋を乾燥させない工夫も効果的です。加湿して空気中の乾燥を防ぐのも、静電気防止につながります。
⓭目安としては入眠してから3時間後。しっかり睡眠をとれば、何時に寝ても成長ホルモンはきちんと分泌されます。ゴールデンタイムを意識しすぎる必要はありません。
⓮シリコンが毛穴に詰まってからだに悪影響を及ぼすという根拠はありません。シリコーンは酸素とケイ素と有機基からなる有機ケイ素化合物で、熱や光に強く柔軟性があり、酸素透過性が高いなどの特徴があります。その安全性もたしかなので、日用品や調理器具、医療用にも多く活用されています。
⓯肌に本来備わっている機能を生かすなら、シャンプーを使って頭を洗うのはじつは週2回でも充分。洗う回数を少しずつ減らして本来のサイクルをとり戻すと、髪も肌も自発的に美しさを保てるようになります。
⓰コラーゲン生成に大いに役立つのが、ビタミンC。コラーゲンをつくるためには欠かせない成分です。つまり、コラーゲンを増やしたいなら、コラーゲンを食べるよりも、ビタミンCを摂取したほうが、より効果的だといえるでしょう。ビタミンCの推奨量は、15歳以上の場合、男女とも1日あたり100ミリグラム。
何個食べれば1日に必要な100ミリグラムを摂取できるかで、換算しています。
レモン(果汁)8個
キャベツ生のもの2〜3枚
キウイフルーツ2個
ブロッコリーゆでたもの1株
みかん4個
赤ピーマン生のもの・大きめ1個
いちご中粒10個
緑ピーマン生のもの・大きめ2個
柿1個
ゴーヤ生のもの・大きめ1/2個
⓱鉱物油として代表的なのは、ワセリン、ミネラルオイル(=流動パラフィン)、シリコーンオイルなど。そう、お馴染みなものばかりです。鉱物油は、わたしたちの皮脂とはまったく違う化学構造ですから、肌のバリア機能を破って体内に浸透することもありません。肌表面に膜をつくり、外部の刺激から皮膚を保護するという意味では、非常に安全性の高い油なのです。
⓲界面活性剤とは、その名のとおり〝界面を活性化させる性質のある成分〟で、簡単にいうと〝水と油を混ざり合うようにする成分〟です。スキンケア製品に使われる界面活性剤のほとんどは、「非イオン界面活性剤」に分類されるもので、非常に低刺激で毒性もなく、アイスクリームや乳飲料の食品添加物としても使われているものです。
⓳セラミドは、表皮のいちばん表面の層である角質層に存在していて、細胞と細胞のあいだを埋める「細胞間脂質」のひとつです。セラミドの役割は、この水と脂が重なり合う構造を、混ざらず崩れないように保持すること。長期的な意味では、肌機能そのものを正常に整え、肌の自己再生力を高めて健康な肌へと導いてくれる、希有な成分だといえるでしょう。
セラミドは化粧品の成分が浸透しやすい角質層に存在していますから、スキンケアで補うことが可能です。セラミドは、身近な食品にも含まれています。たとえば、お米、小麦、乳製品、大豆、そしてこんにゃくがあげられます。こうした食品やサプリメントでも摂取できますが、口にしたセラミドが体内ですべてセラミドになるわけではありません。理由は前述でお話ししたコラーゲンと同じです。
セラミドは肌のターンオーバーの過程でつくられるものなので、セラミドの原料をある程度摂取し、ターンオーバーを高める食品をバランスよく食べたほうが効果的だと思います。肌の代謝に必要なビタミン類や、肌をつくるたんぱく質──とくに体内で生成できない必須アミノ酸などです。ビタミン類は野菜や果物から、必須アミノ酸は大豆製品や鶏肉や豚肉、魚やヨーグルトなどから摂取することができます。また紫外線によるダメージは、肌のターンオーバーを乱す最大の要因ですから、日々の紫外線対策はセラミドケアとしても、とても大切です。
⓴老人性色素斑のおもな原因は、別名「日光黒子」とも呼ばれることからもおわかりのとおり、紫外線です。長年浴びつづけた紫外線によって肌のメラニンが増加し、肌から排出されずに残ると老人性色素斑ができます。一度できてしまったシミはそう簡単には消えません。とくに①の老人性色素斑は、なかなか薄くなりません。本格的に消すためには、レーザー治療が必要になります。
何より大切なのは、これ以上シミを増やさないことです。そのためにすぐできて、効果が実証されているのが紫外線対策と摩擦を防ぐこと。紫外線対策に関しては、日焼け止めを一年を通して塗ることが大切です。紫外線のダメージを抑えることは、肌のターンオーバー機能を正常に働かせることにもつながります。ですから結果的には、できてしまったシミが少しずつ薄くなっていくという、好循環にもつながるのです。
【実践】3個の行動ポイント
✅毎日日焼け止め(SPF15)をこまめに塗り、紫外線対策する!
✅なるべく皮膚を触らない!
✅森林浴する!
ひと言まとめ
シンプルスキンケアが肌構造を蘇らせる!
書籍情報
【書籍名】美容常識の9割はウソ
【著者名】落合 博子
【出版社】PHP研究所
【出版日】 2019/9/20
【オススメ度】★★★★☆
【頁 数】224ページ
【目 次】
はじめに
STEP01 お肌のこと、どれくらい知っていますか?
美肌への近道は、正しい知識から
形成外科医だから見えること
美容情報にはウソがいっぱい!?
広告に翻弄されていませんか?──〝肌の奥まで浸透する〟はあり得ない
肌の最大の役割は「からだを守ること」
肌の自己再生力を甦らせる──大切なのはバリア機能
迷える化粧品選びと決別したいなら
STEP02 もう惑わされない!知っておきたい美容常識の真実
「無添加化粧品=安全・安心」はもう古い
化粧品は「浸透させる」と生命が危険!?
〝薬用=医薬部外品のほうが効果的〟とは限らない
「オーガニック」「天然成分由来」に騙されてはいけない
じつは曖昧な「敏感肌用」の定義
光老化を防ぐ、紫外線予防の正しい知識
〝SPFは高いほど効果がある〟は思い込み
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〝ゴールデンタイムの睡眠が美肌をつくる〟は根拠ナシ
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身近な森林浴で、ストレスフリーの肌に
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「合う合わない」を見極めるシンプルケア
内側からも満たされて美肌が叶う
化粧品も健康食品も頼りすぎは禁物
おわりに