【書評・要約】歯医者が教える 歯のQ&A大全【歯磨きが重要!】

歯科医師・小谷航が、『歯医者が教える 歯のQ&A大全』と題して、

歯にまつわるさまざまな疑問について

解説する1冊。

書籍の紹介文

あなたは長生きしたいですか?

長生きするには何が大切だと思いますか?

動物は歯が摩耗してくると口からものを食べられなくなり、弱っていき、やがて体力が落ちて死んでいきます。

歯の存在する口腔という組織は人間の消化器のトップバッターなので、ここのコンディションが悪いと体というチームが機能しなくなるのは明白。

と筆者は説きます。

本書は、「歯の基本的な知識」から、「歯の治療法」「正しい歯磨きのしかた」「いい歯医者の選び方」など一般的な歯にまつわる知識について解説する一冊。

自分の歯になにが起こっているのか、

歯科医はどのような基準で治療を判断しているのか、

なぜその値段なのか、

どのような歯科医に診てもらえば

後悔のない治療になるのかが、わかります。

【要約】15個の抜粋ポイント

❶虫歯になる原因はシンプルで、「口内に細菌と細菌のエサがあるから」です。歯磨きは、それを除去する役割なのですが、不完全な歯磨きだと虫歯になってしまいます。もう少し詳しく虫歯になるメカニズムを説明します。口のなかにいる細菌には、「虫歯菌」と「歯周病菌」と「常在菌」の3つがあります。

主に虫歯の原因となるのは虫歯菌で、砂糖を主な栄養源としており、口中で滞在中に歯を溶かす“酸”を放出します。この虫歯菌の量が増えれば増えるほど、放出される“酸”の量も増えるので、歯のエナメル質(歯の外側をおおう硬い組織)や象牙質(エナメル質より内側にある組織)が虫歯になります。

❷この本でも何度もお伝えしますが、結局「歯磨き」が一番重要です。

ある調査では、歯ブラシによる歯垢の除去率は全体の6割程度で、加えてデンタルフロスを行うと2割高まり、歯垢の除去率は8割以上になるともいわれています。

❸唾液には酸性を中性に戻す「重炭酸塩」という成分が含まれていて、口内が酸性になっても中性に戻す働きがあります。ですので、唾液が出れば出るほど虫歯になりにくい環境になります。唾液を出すためには、水分を摂取することが重要になってきます。寝る前や歯磨きをしたあとなどに水分を摂ると効果的です。

ただし、利尿作用があるコーヒー・緑茶・アルコールなどは逆効果になってしまうので、注意しましょう。

❹また、「キシリトール」入りのガムを上手に用いることで、口内を虫歯になりにくい環境にすることもできます。キシリトールは虫歯菌のエサになりますが、虫歯菌はキシリトールを分解できず、栄養とすることができません。分解しようとするエネルギーを無駄に使わせることにより、虫歯菌が減っていくという仕組みなのです。

さらに、ガムを噛むことで唾液を分泌させて、お口のなかを酸性から中性に戻す働きを促せます。ただし、すべてのキシリトール配合のガムに砂糖が含まれていないとは限らないので、商品を選ぶ際は注意してくださいね。

❺●歯の表面を修復する働きがある「フッ素」を含むもの

→牛肉・りんご・ワカメ・お茶・味噌など

●歯の原料となる「カルシウム」を含むもの

→乳製品・小魚・大豆・ひじき・小松菜など

●歯の石灰化を助ける「リン」を含むもの

→チーズ・卵など

●歯の基礎となる「たんぱく質」を多く含むもの

→牛乳・魚・卵・豆腐など

●カルシウムの代謝を助ける「ビタミンD」を含むもの

→牛乳・卵・チーズ・ひじきなど

●エナメル質を強化する「ビタミンA」を含むもの

→豚肉・レバー・かぼちゃ・人参・卵・ほうれん草など

●象牙質を作る「ビタミンC」を含むもの

→みかん・レモン・ブロッコリー・ピーマンなど

❻粘着質があるものは、歯の表面に残りやすいので最も虫歯になりやすい食べ物といえるでしょう。例えばキャラメルやキャンディーは、虫歯予防において最も避けるべき食べ物です。

フッ素は、細菌で溶けかかった歯の表面に塗布することで歯の表面を修復する働きがあります。この働きを「再石灰化」と呼びます。初期段階の虫歯の場合、小さな穴が開いている程度の治療は、フッ素を塗布して再石灰化を促すことで元の状態に戻ることがあります。

また、フッ素には細菌が発生する酸の量を抑制する働きがあることもわかっています。

ちなみに、市販されている歯磨き粉のなかで個人的におすすめなのは「ライオンチェックアップスタンダード」です。1,450ppmのフッ素配合で、市販のなかでは高濃度のものに分類されます。低濃度のフッ素でも毎日使用することで、歯を細菌から守ることが可能なので、ぜひ試してみてくださいね。

❽歯垢を歯磨きでしっかりと除去できていないと、歯と歯茎の間に付着し続けてしまい、溝にたまります。 歯垢は細菌の塊なので、放っておくと細菌が毒素を出して歯茎を刺激し、炎症を起こし出血します。 こでが「歯周病」です。 進行すると歯ブラシや、食事をするときに食べ物が当たる程度の少しの衝撃が加わるだけでも出血するようになります。

歯周病は自覚症状がないまま静かに進行していく病気です。別名「沈黙の病気(サイレント・ディジーズ)」とも呼ばれています。歯周病には、症状が悪化するごとに段階があります。初期段階を「歯肉炎」と呼び、歯茎に炎症が起こるのみで、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。

歯肉炎が進行すると、「軽度歯周炎」になり、歯茎の境目から出血がみられます。歯磨きをするときに出血する人は、この状態にあてはまります。さらに症状が進行した「中度歯周炎」になると痛みを伴うため、歯磨きができなくなります。こうなると、口内細菌を除去できなくなるため症状はさらに悪化していきます。

さらに進行した「重度歯周炎」になると、炎症が歯茎を形成している内部の骨まで到達して、骨を溶かしはじめます。やがて、歯がグラつくようになり、最悪の場合、歯が抜けてしまうこともあります。

❾市販の歯磨きでホワイトニング効果が高いと謳っているものを使用する人が多いですが、ほとんどのものには歯を削る「研磨剤」が含まれています。歯の表層であるエナメル層を削って、下の象牙層をあらわにすることで白く見えるのです。しかしこれをくり返すと、どんどん歯が薄くもろくなってしまいます。

歯は削ると寿命を縮めることになるので、長期的に考えて削る以外の選択肢としてホワイトニングを推奨します。

歯の汚れを落とすには、硬さは「ふつう」で毛先の形は「フラット」なタイプが適しているといえます。大人用の歯ブラシが大き過ぎる、または現在使用しているけれど「歯医者で磨き残しを指摘された」という人は、よりヘッド部分が小さい子ども用歯ブラシを使用してもいいでしょう。

歯ブラシの寿命は約1ヶ月。常に水に濡れた状況下で細菌が繁殖しやすいので、こまめに替えて清潔な状態を保ちましょう。

⓫歯医者の立場からいえば、しっかりと磨けているのであれば歯磨き粉を使わなくてもOKです。歯磨き粉を使って歯磨きをしていれば虫歯にならないというわけではありません。大事なのは「磨き方」です。しっかり磨けているとして、より効果的な虫歯予防を考えるのであれば、フッ素入りの歯磨き粉を使うといいでしょう。

フッ素は、既にお伝えしたように歯垢や歯の汚れから出る酸の量を抑えてくれます。酸は、放っておくと歯の表面を溶かすため、虫歯の原因になります。フッ素には歯をコーティングする働きもあるので、汚れをつきにくくし、口内環境を整えるのに効果的です。大人用の歯磨き粉で、「高濃度フッ素入り」と書かれた歯磨き粉はおすすめできます。歯磨き粉の量は、だいたい2㎝程度が適切とされています。

⓬右利きの人の場合

左利きの人の場合

⓭「ちゃんと歯を磨いているのに虫歯になる」「歯ブラシ時に血が出る」「最近食事をするときに歯がしみる」など感じている人は、力を入れ過ぎなブラッシングのせいかもしれません。毎回力を入れ過ぎたブラッシングを行うと、次第に歯の表面が削れてしまい、冷たいもので歯がしみるなど「知覚過敏症」の症状を引き起こす原因にもなります。

実は汚れはそんなに力を入れなくても、落ちます。歯ブラシを握る適正な力加減は、150~200gといわれています。

⓮歯ぎしりの治療は、「歯ぎしり・食いしばり用」のマウスピースをはめて歯の消耗を防ぐ方法があります。このマウスピースは保険適用内でだいたい3,000円程度でつくることが可能です。自分の歯の代わりに、歯ぎしりでかかる負荷をマウスピースがカバーしているので当然消耗します。摩耗具合は個人差があるので、すり減ったら交換するといいでしょう。

実は、歯ぎしりは浅い眠りのときに起こることがわかっています。人間は、深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返し、深い眠りのとき筋肉の動きは抑制されています。そして眠りが浅くなると抑制が解け、その拍子に咬筋(頬の筋肉)が動き、歯ぎしりが起こると考えられるのです。

⓯つまり、徹底的に歯垢を除去できていることを前提に、歯の表面の抗菌効果を持続させたいなら、イオン系の「ガムデンタルリンス」「モンダミン」「ネオステリングリーン」が効果的で、歯磨きと歯磨きの間のタイミングや、歯磨きでの磨き残しが予想される場合には、非イオン系の「リステリン」などが有効ということになります。

⓰口臭の原因は、90%以上は口のなかにあるといわれています。歯磨きで落としきれなかった食べ物のかすなどのたんぱく質が、口内で細菌に分解・発酵される過程で「硫黄化合物」になります。硫黄化合物は気化しやすくガスとなり、悪臭を放つのです。

歯磨きとは別に「舌磨き」を行う人がいますが、加減がわからず舌を傷つけてしまう人もいます。味覚を司るデリケートな場所ですので、通常の歯磨きとうがいを丁寧に行うケアで十分だと思います。

⓱口元の印象を変えたいけど、歯は抜きたくないという人は、口の周りの筋肉を鍛える方法「口腔筋機能療法」で口元を引き締めるのもひとつの方法です。

⓲上手に磨けている人でも、過去に虫歯治療をしている人の場合、被せ物や詰め物に汚れが溜まり虫歯になりやすくなるので、どんなに間が空いたとしても年に1回の歯科検診をおすすめします。

⓳正しい咀嚼のポイント

・ひと口の量を大きくしすぎない口に自然に入る大きさにすることで、咀嚼しやすくなる

・大きなものは、前歯と犬歯で噛む前歯で噛んだあとに、隣の犬歯は根っこが深いので、強い力で噛み切ることができます。その後、奥歯に食べ物を送るとスムーズです。

・咀嚼中は口を閉じて、鼻呼吸をするよく噛んで食べることで、歯・頬・口周りの筋肉を使うようにしましょう。口を閉じて食べると、唾液も出やすくなり口内環境にとってもいい影響を及ぼします。また食べものを細かくしてから飲みこむことで、喉にも負担をかけづらく、消化もしやすくなります。

【実践】3個の行動ポイント

   ✅ライオンチェックアップスタンダードを使ってみる!

   ✅キシリトール入りガムを食後に噛んで唾液を出す!

   ✅左利き用の順番で歯磨きする!

 

 

ひと言まとめ

1日2回の歯磨きは必ずしよう!

 

 

 

 

 

書籍情報

【書籍名】歯医者が教える 歯のQ&A大全

【著者名】小谷航

【出版社】クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

【出版日】2021/9/10

【オススメ度】★★★☆☆

【頁 数】160ページ

【目 次】

    はじめに

    第1章 無視できない!あなたをむしばむ虫歯のこと

    Q1.どうしてちゃんと歯磨きをしているのに虫歯になるの?

    Q2.虫歯を放置すると、どうなるの?

    Q3.歯磨き以外の虫歯予防ってあるの?

    Q4.虫歯になりにくい食べ物ってあるの?

    Q5.虫歯になりやすい食べ物ってあるの?

    Q6.フッ素ってどんなもの?

    Q7.虫歯の治療って痛いの?

    Q8.一度虫歯になると、治療してもまた虫歯になるの?

    Q9.虫歯って自分で見つけられるの?

    Q10.治療に使われる「金歯」「銀歯」「プラスチック(レジ  ン)」それぞれなにが違うの?

    ◉コラム①虫歯ってうつるの?遺伝なの?

    第2章 歯が抜けたり、欠けたりしたらどうすればいいの?

    Q1.歯はなにでできているの?なんのためにあるの?

    Q2.歯は抜けたら生えてくるの?

    Q3.歯がなくなったらどうなるの?そのままにしちゃだめなの?

    Q4.歯が抜けたときの治療法はなにがあるの?

    Q5.歯が欠けたらどうすればいいの?

    Q6.歯を磨いたら血が出るのはなぜ?

    Q7.歯石ってなに?どうしてつくの?

    Q8.歯の神経って抜いたらどうなるの?

    Q9.歯を削って大丈夫なの?

    Q10.歯って白くできるの?

    第3章 歯磨きにまつわるエトセトラ

    Q1.虫歯予防のためにはどんな歯ブラシを選ぶといいの?

    Q2.歯ブラシの交換時期っていつごろ?

    Q3.歯磨き粉って必要?どんな歯磨き粉を選べばいいの?

    Q4.歯磨きってどのくらい時間かければいいの?正しい磨き方ってあるの?

    Q5.1日に何回歯を磨くのがいいの?

    Q6.歯ブラシと電動歯ブラシ、どっちのほうがいいの?

    Q7.食後、すぐ歯を磨いたほうがいいの?

    Q8.赤ちゃんはいつから歯磨きをはじめればいいの?

    Q9.仕上げ磨きはいつまで必要?

    Q10.歯磨き粉には、なにが入っている

    第4章 歯の病気にまつわるお話

    Q1.親知らずってなに?

    Q2.親知らずって生えたら抜くべき?

    Q3.歯ぎしりってなんでするの?

    Q4.口内炎ってなんでできるの?

    Q5.口内炎ってどうやって治すの?

    Q6.口内洗浄液ってなんのために使うの?

    Q7.歯茎ってそもそもなんのためにあるの?

    Q8.なぜ歯に着色するの?

    Q9.冷たいものを食べると、どうして歯がしみるの?

    Q10.口が臭くなるのはなぜ?

    ◉コラム②口臭への適切なケアの方法は?

    第5章 矯正・セラミック・ホワイトニングについて

    Q1.歯の矯正ってどうやるの?

    Q2.矯正って1回したらきれいな歯並びを維持できるの?

    Q3.矯正をすると美人になれるの?

    Q4.矯正をするとき、歯を抜きたくない場合はどうするの?

    Q5.セラミックってなに?メリット・デメリットを教えて!

    Q6.市販のホワイトニングって効果あるの?安全なの?

    Q7.「オフィスホワイトニング」と「ホームホワイトニング」はどちらがいいの?

    ◉コラム③インプラントってなに?

    第6章 歯医者とのもっといい付き合い方

    Q1.歯科検診ってどれくらいの間隔で行ったほうがいいの?

    Q2.いい歯医者選びのコツは?

    Q3.歯医者さんとの適切なコミュニケーションの取り方とは?

    Q4.歯医者さんにとって、困る患者さんっているの?

    Q5.歯医者さんがおすすめする食べ方ってあるの?

    Q6.病院の歯科や口腔外科は、なにをしているの?

    Q7.デンタルローンってなに?

    Q8.歯医者さんはどうやって免許を取っているの?

    Q9.若いうちに歯を治したほうがいいの?

    ◉コラム④骨切りってなに?

    おわりに

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